アトピー性皮膚炎の原因とは

まだはっきりと解明はされていない

アトピー性皮膚炎は、具体的な発症メカニズムが完全には解明されていない皮膚疾患です。現在わかっている要因としては、その人が持つ体質と生活環境が関係することが挙げられます。

アトピー性皮膚炎には体質が影響する?!
本人だけでなく家族にアレルギー疾患を持つ人がいる場合は、アトピー性皮膚炎になりやすい体質と言えるかもしれません。それは、アトピー性皮膚炎の要因として考えられているアトピー素因の1つに、遺伝的要素が挙げられているからです。ただし、両親や祖父母、兄弟姉妹などにアレルギー疾患の既往歴があるからといって、必ずしもアトピー性皮膚炎になるわけではありません。

また、IgE抗体と呼ばれるたんぱく質が、血液中に多く存在する人もアトピー性皮膚炎になりやすい体質と言えるでしょう。IgE抗体は、細の菌やウィルスなどの外敵が侵入した場合に体を守る機能(免疫反応)を持っていますが、その「体を守る」ための攻撃を過剰に行うことで、アレルギー反応として自分自身の体を傷つけてしまいます。IgE抗体が多いほど、アレルギーを引き起こすリスクが上がるため、「アレルギー体質」となります。

どのような生活環境が影響する?
アトピー性皮膚炎では、様々な生活環境が影響してきます。季節性の乾燥や気温上昇、埃やダニなどの室内環境、ストレスや睡眠不足なども影響することがわかっています。このほか、日光(紫外線)や衣類刺激、ペットなどが原因となることもあります。

食物アレルギーとの関連性は?
以前は、「食物アレルギーがあるとアトピー性皮膚炎になる」と考えられていました。ですが現在では、バリア機能が低下した肌からアレルギー要因となる物質が侵入して食物アレルギーを発症することがわかってきました。食物アレルギーのリスクを軽減するためには、アトピー性皮膚炎の治療をしっかりと行うことが大切です。

肌のバリア機能低下とは

アトピー性皮膚炎の要因として、肌のバリア機能の低下が挙げられます。肌は多くの外敵から体を守ってくれていますが、バリア機能が正常に働いていなければ、その役割を果たすことができません。

肌表面の角質層が肌を守る「バリア機能」を持つ
角質層は、肌の表皮の一番外にあり、十数層に及ぶ角質細胞とそのすき間を埋める角質細胞間脂質によって構成される、厚さ約0.02mm程度と非常に薄い膜です。角質細胞間脂質の主な成分の1つは、高い保湿力で知られる「セラミド」です。セラミドは脂質でありがなら、肌の水分をしっかりと抱え込み、逃がさない性質があるため、セラミドが十分に蓄えられている肌は、しっとりとした潤いを保つことができます。

角質層は、外部からの刺激や雑菌、熱や紫外線などから肌を守り、肌トラブルを防いでいます。ですが、この角質層が乾燥すると、角質細胞が剥がれ落ちてすき間ができ、さらなる肌の乾燥や外敵などの刺激をブロックできない「バリア機能が低下した状態」になります。

バリア機能が低下すると外敵からの攻撃に負けてしまう
バリア機能が低下した肌は、いわば「すき間だらけ」の状態になり、アレルギー要因や細菌などが簡単に侵入できてしまいます。アトピー性皮膚炎はもちろん、黄色ブドウ球菌などの細菌やヘルペスなどのウィルスにも感染しやすく、重症化の危険性があります。

「かゆいから」とかいてしまうとますますバリア機能が失われる
アトピー性皮膚炎では、激しいかゆみを伴うことが多く、無意識にかいてしまいます。ですが、この「掻く」ことは肌へ刺激となり、さらなるバリア機能の低下を引き起こす悪循環となります。アトピー性皮膚炎を回復させるには、バリア機能を正常化させることが大切です。

症状が悪化する要因も人によりさまざま

アトピー性皮膚炎が悪化する要因は、人によって様々です。医師の指導に従い、悪化要因を取り除く必要があります。

年齢によって悪化要因が変わる
アトピー性皮膚炎が悪化する要因は、年齢によっても異なります。
乳児:2歳未満/食べ物・発汗・環境因子・細菌/真菌など
幼児・学童:2歳から12歳/食べ物・発汗・環境因子・細菌/真菌・接触抗原・ストレスなど
思春期・成人:13歳以上/環境因子・発汗・細菌/真菌・接触抗原・ストレス・食べ物など

要素は1つだけとは限らない
アトピー性皮膚炎が悪化する要因は、1つだけとは限りません。食べ物によるものだったり、ストレスによるものだったり、様々な要因が複合的に影響していることがあります。そのため、悪化の要因となるものは何かを十分に知り、対策を講じる必要があります。

季節性の悪化要因もある
夏の暑さや冬の乾燥などの「季節特有の環境」によっても、アトピー性皮膚炎が悪化することがあります。
■春:花粉によるアレルギー刺激、環境変化によるストレスなど
■夏:発汗による刺激、日焼けによる肌ダメージなど
■秋:花粉によるアレルギー刺激、ダニの死骸によるアレルギー刺激など
■冬:乾燥によるバリア機能の低下、ハウスダストによるアレルギー刺激など

症状には個人差がある

アトピー性皮膚炎は、肌の状態や体質、環境などの様々な要因によって発症するため、症状には個人差があります。また、良くなったり悪くなったりを繰り返すことから、同じ人でも時期によって症状が異なることもあります。

かゆみのある湿疹ができる皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、1歳未満の乳児は2か月、それ以降は6か月以上の慢性化したかゆみを伴う湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す症状です。主な症状としては以下のものが挙げられます。
■汁が出て、ジクジクとした状態になる(湿潤)
■皮膚がカサカサになり、薄く剥ける(びらん)
■小さい血の塊であるかさぶたができる(血痂)
■皮膚の表面がボロボロと剥がれ落ちる(落屑)
■皮膚が盛り上がって厚くなる(苔癬化)
多くの場合、上記のような症状が左右対称に現れます。

年齢による特徴的な症状
アトピー性皮膚炎は、年齢によって症状が現れやすい箇所が変化します。

乳児の場合
主に頭や顔、首などに現れ、悪化すると胸や背中などの胴体や手足などの四肢に広がります。

幼児・学童期の場合
肌が乾燥しやすい幼児期は、耳切れや目の周辺のかゆみのほか、首の周りやお尻、ひじやひざなどの関節の内側や裏側などに多く現れます。

思春期以降の場合
成長すると手足などの四肢は比較的軽くなる傾向がある反面、顔や首、胸などの上半身に湿疹が集中する傾向があります。特に顔は赤みを帯びることが多く、まゆげの外側が抜け落ちたり、首に症状がある場合はさざ波状の色素沈着が起こったりします。

アトピー性皮膚炎の重症度を測る基準
アトピー性皮膚炎では、医師が治療法を選択するにあたって、「軽症」、「中等症」、「重症」、「最重症」と4段階ある症状の度合いを判断します。
■軽症:面積に関わらず、軽度の皮疹のみみられる
■中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満にみられる
■重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上30%未満にみられる
■最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる
※軽度の皮疹:軽度の紅斑,乾燥,落屑主体の病変
※強い炎症を伴う皮疹:紅斑,丘疹,びらん,浸潤,苔癬化などを伴う病変

悪化する原因として多いのは

アレルギー性の原因
食べ物
牛乳や小麦、卵など、特定の食べ物にアレルギーがある場合、その食べ物を食べたり、触れたりすることで、アトピー性皮膚炎が悪化することがあります。

ダニ(死骸や糞)やハウスダスト
ダニやハウスダストにアレルギーがある場合、室内の環境によってアトピー性皮膚炎が悪化することがあります。

細菌・真菌
細菌やカビなどの真菌は、目には見えなくても体には大きな影響を及ぼします。特に身近な存在であるカビは、室内に約360種類ほどあると言われており、注意が必要です。

猫や犬などのペット
主に動物の上皮に対するアレルギーがある場合、重症化しやすいと言われています。また、室内で飼育している場合は、毛に埃がついて二重の悪化要因となることがあります。

化粧品や薬によるかぶれ
肌に合わない化粧品や外用薬を使用したことで、かぶれを引き起こし、肌トラブルからアトピー性皮膚炎が悪化することがあります。


非アレルギー性の原因
ストレス
環境の変化や人間関係などでストレスを感じると、悪化することがあります。また、ストレスでイライラしていると、掻きむしる行動につながりやすくなり、肌のバリア機能の低下を招いてしまいます。

汗や汚れ
汗そのものは保湿や免疫機能の調整などの優れた機能を持っていますが、そのまま放置するとかゆみの原因になります。

衣類による肌荒れ
チクチクする化学繊維や毛素材の衣類は、素材そのものが肌への刺激となり、かゆみを引き起こすことがあります。また、通気性が悪く、汗を吸い取らない素材の衣類は、汗による悪化要因にもなります。

肌の乾燥
肌が乾燥すると、角質層のバリア機能が低下し、肌トラブルの原因になります。バリア機能が低下した状態では刺激に弱く、外敵から体を守ることができなくなります。

「かゆい=かきむしる」は悪化する原因
かゆみがあると意識しなくても掻きむしってしまうことがありますが、これは肌への刺激となります。掻きむしることで肌の状態が悪化し、さらにかゆみが増す悪循環を招くことになりますので、掻かないようにすることが大切です。医師から処方される、かゆみを抑える外用薬や内服薬を用いて、上手にかゆみ対策を行いましょう。

「肌バリア機能を改善」するスキンケアクリームを活用しよう

アトピー性皮膚炎の原因を取り除いた後は適切に対処することが重要です。

辛い痒みや肌荒れを応急的に抑えるステロイドや、肌を一時的に保護する保湿はとても大切ですが、それでは根本的な改善に繋がりません。

アトピー性皮膚炎を繰り返さないためには、保湿剤やステロイドの一時的な対処ではなく、「肌バリアを改善」するアプローチが必要になります。

最近では保湿効果だけでなく、「肌バリアの改善」にも効果があるスキンケアクリームが人気です。

「ちゃんと保湿してるのに痒みや炎症を繰り返す、。」「ステロイドに頼り続けるのは不安、。」という方はぜひ「肌バリアの改善」を図るアプローチをとられてはいかがでしょうか?

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