アトピー性皮膚炎でのスキンケア~保湿剤~

アトピー性皮膚炎では、特に意識したい「保湿」

アトピー性皮膚炎の治療は、医療機関を受診していれば完了するわけではありません。医師が処方する外用薬や内服液などの処方をしっかり守るのはもちろん、毎日の生活の中で行う「スキンケア」も、大切な治療です。

アトピー性皮膚炎は、肌のバリア機能が低下している
正常な肌は、肌の表皮の一番外側にある「角質層」が、外敵や刺激から体を守る「バリア機能」を担い、健康な状態を保っています。ですが、乾燥やアレルギー因子などによってこのバリア機能が低下すると、乾燥が進むうえに細菌やウィルスなどの外敵の侵入が容易になり、アトピー性皮膚炎の悪化や皮膚の感染症を引き起こします。

乾燥した肌は、外敵や刺激だけでなく、さらにかゆみを増幅させます。肌を掻くことでますます肌の状態が悪化し、またかゆくなる、というかゆみの連鎖を断ち切るためにも、保湿をきちんと行いましょう。

肌のバリア機能を回復させるためにはスキンケアが大切
肌のバリア機能を正常に働かせるためには、角質層の水分を十分に蓄え、しっとりとした潤いのある肌にする必要があります。保湿は、このバリア機能を回復させる大切な「治療」になります。

保湿は、ただ水分を足せば良いというわけではありません。正常な肌では、角質層に水分を含ませる「天然保湿因子」、水分を保持する作用を持つ「セラミド」、保持した水分を逃がさない「皮脂」の3大保湿因子をバランス良く補うことが大切です。

肌の潤いを保つために、しっかりと保湿
肌のバリア機能を回復するために、乾燥する時期や部位だけでなく、全身への保湿習慣を継続して行うようにしましょう。医師から処方された保湿剤を使用する場合は、医師が指導した回数に従って保湿します。特に医師からの指示がない場合は、入浴後の保湿はもちろん、乾燥していると感じたら、こまめに保湿するのがおすすめです。判断に迷うときは、医師に相談しながら進めると安心です。

保湿剤は肌の水分量を維持するのに有効

皮膚が乾燥しがちなアトピー性皮膚炎の肌には、潤いをサポートする保湿剤は欠かせません。医師から処方された保湿剤以外のものを使用する場合は、刺激が強いものは避け、自分に合った保湿剤を選ぶようにしましょう。

保湿剤にはどんな種類がある?
保湿剤には様々な種類があります。使用感や成分など、肌の状態や使用する場所、また時期などによって使い分けると良いでしょう。使用にあたっては、医師の指示に従い、初めて使う際には試し塗りをして異常がないか確認しましょう。もし使用中に肌が赤くなったり、かゆみが強くなったりしたら、すぐに使用を中止し、医師に相談してください。

保湿剤のタイプ
保湿剤には、大きく分けて3つのタイプがあります。日々使うものですので、使いやすさなどは重視したいところです。使用感や肌の状態などを考慮して選択するようにしましょう。

◆ローションタイプ
・保湿剤の中でも、べたつきが少なくさらっとした使用感
・のびが良いため、塗りやすい
・頭皮にも塗りやすい
・保湿剤の中でも保湿保護効果は弱め

◆クリームタイプ
・水溶性でのびが良く、塗りやすい
・保湿保護力はローションと軟膏の間くらい
・比較的べたつきにくいので、肌を露出する部位にも使いやすい

◆軟膏タイプ
・ほかのタイプよりも皮膚への刺激が少なく、保護力高め
・油性で水をはじく性質がある
・乾燥しがちな冬に使いやすい
・のびが悪く、べたつきやすいので、広範囲には塗りにくい

保湿剤の成分
保湿剤の中でも、3大保湿因子のどれを補う成分が入っているかによって、効果が変わってきたり、メリットデメリットが変わったりします。医師に相談しながら、自分の肌に合うものを塗るようにしましょう。

保湿剤の保管はどうしたら良い?
医師や薬剤師から特段の指示がなければ、高温・多湿・直射日光を避けた場所で保管しましょう。一般的には、15度から25度程度の常温保管が良いと言われています。ワセリンなどの油脂性の保湿剤の場合、あまり低温で保管していると固くなり、取り出しにくいうえに、塗りにくくなってしまいます。少し手のひらなどで温めてから使うようにするといいかもしれません。逆に暑い時期は分離する可能性がありますので、冷蔵庫などで保存しましょう。

未開封のものであれば、3年程度の使用期限が多いですが、開封後はなるべく速やかに使い切るのがおすすめです。開封から長時間経った保湿剤には、雑菌が繁殖して肌トラブルの原因になることがあります。

入浴後の保湿は「速やか」が基本

入浴後は5分以内に保湿剤を
入浴直後の肌は、表面に水分が十分に入っており、しっとりと潤っています。その潤いをできるだけ多く肌の内部に留めるためには、入浴後5分以内を目安にして、速やかに保湿剤を塗るようにしましょう。脱衣所など、入浴後すぐ手に取れる場所に保湿剤を準備しておくのもおすすめです。

どうしても保湿剤を塗るのが遅くなってしまう場合は、肌に刺激の少ない化粧水などをスプレーし、肌を湿らせてから保湿剤を塗ると良いでしょう。

塗るときは必ず手を清潔な状態にして塗りましょう
保湿剤は、必ず清潔な手で塗るようにしましょう。せっかくの保湿剤も、手が汚れた状態だと、雑菌や刺激物を体に塗り広げてしまうことにもなりかねません。特に、入浴した本人以外が塗る場合は、きちんと手を洗ってから塗ってください。

乾燥している箇所だけでなく、全身まんべんなく
保湿剤を塗る際は、乾燥している箇所だけでなく、全身をくまなく塗るようにしましょう。広範囲に塗るには、指先で広げるのではなく、手のひら全体に保湿剤を多めに取り、手でスタンプのようにして軽く押さえて広げ、優しくのばします。ゴシゴシとすりこむようにして塗ると、刺激になってしまいますので注意が必要です。

洗うのと同様に、しっかりとしわを伸ばして塗るのがポイントです。首やひじ・ひざなどの関節やわきの下・腰など、体を動かしてしわの中まで保湿剤をいきわたらせます。耳切れしやすい耳周りや乾燥しがちなまぶたなども、しっかり保湿して乾燥から守り、肌のバリア機能が回復するようにしましょう。

保湿剤のスキンケアを行ううえでのポイントとは

肌の状況や使用部位に合わせて最適なものを
夏の暑い時期にワセリンなどの保湿剤を使うと、べたついて不快になったり、あせもなどの肌トラブルを引き起こしたりします。時期や部位などに合わせて、複数の種類の保湿剤を用意しておくと良いでしょう。「夏はローション、冬は軟膏」、「頭皮はローション、顔や胴はクリーム、足は軟膏」など、自分自身にとって使いやすく、快適であるものを選択するのがおすすめです。医師から処方される場合でも、好みや状況などを相談することで、毎日のスキンケアを快適なものにすることもできます。

保湿剤を塗るのに時間をかけすぎない
スキンケアは毎日行うものですので、負担が大きくなりすぎては続けるのもストレスになってしまいます。丁寧に塗ろうとするあまり、何十分もかかってしまっては、手間がかかりますし、湯冷めして風邪を引くリスクさえあります。全身の保湿にかける時間を5分程度にすることが、ストレスなく長く続けられるコツです。

小さな子どもには、スキンケアタイムが楽しくなる工夫を
小さな子どもに「じっとしていなさい」と言っても難しいものです。大好きなおもちゃを渡して注意を引いたり、言葉遊びをしたりして、「スキンケアの時間は楽しい」と思えるような工夫をすると、スムーズにスキンケアできるようになります。

また、幼児期や学童期など、自分自身でできることが増えてきたら、「手は自分で塗ってみよう」など、少しずつ自分で塗れるように練習すると良いでしょう。自分で塗った箇所が良い状態になってくると、スキンケアに対してポジティブな印象を持つことにもつながります。成長に併せてスキンケア面からも自立を促せるよう、「自分でやってみる」はおすすめです。

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