乳児・幼児・学童期の肌のかゆみ! アトピー性皮膚炎? 湿疹?

子どもの肌のかゆみ! 湿疹? アトピー性皮膚炎?

子どもは、肌の機能が成熟しておらず、皮脂の分泌が大人ほど正常には働いていません。そのため、肌は乾燥しやすく、大人以上に肌のバリア機能が弱い状態と言われています。

子どもは、トラブルが起こりやすい敏感な肌
敏感肌は、大人だけでなく子どもの肌にも言えます。肌の「バリア機能」は、角質層と皮脂によって行われていますが、赤ちゃんや子どもの肌は、角質層も薄く、皮脂の分泌が少ないため、大人ほどバリア機能が整っていません。そのため、子どもの肌を触ると、非常に薄く柔らかいことがわかります。

バリア機能が十分に働かない子どもの肌は、刺激に非常に弱く、汗やよだれなどの自分自身の体から生成されるものでも「異物」として捉え、湿疹などの肌トラブルを引き起こします。もちろん、気温の変化や食物、摩擦などの刺激にも敏感に反応してしまいますので、子どもの肌はしっかりとケアすることが大切です。

乳児湿疹とアトピー性皮膚炎は違うもの?
乳児期に起こる湿疹は、すべて「乳児湿疹」と呼ばれます。乳児湿疹には、頭などに薄い黄色のかさぶた状のものができる「乳児脂漏性湿疹」や、大量の汗で汗腺が詰まって起こる「あせも」など、様々なものがあります。アトピー性皮膚炎は、乳児湿疹の中でも、湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、乳児なら2か月以上、それ以降は6か月以上と慢性的に続く症状を指しています。一度の診察で「アトピー性皮膚炎」と診断されることは少なく、経過観察のため、しばらくは乳児湿疹と告げられることが多いようです。

乳児湿疹と診断されても、スキンケアをしっかりと行い、医師から処方される外用薬などを指示に従って使用する点に変わりはありません。症状を悪化させないためにも、できることから丁寧に行っていきましょう。

子どもの肌トラブルには、アトピー性皮膚炎以外に何が多いの?
子どもは刺激に弱い「敏感肌」ですので、アトピー性皮膚炎以外にも様々な肌トラブルを起こすことがあります。毎日のスキンケアを丁寧に行って、成長による肌のバリア機能向上までのサポートを行いましょう。

乳児期に多い肌トラブル
■おむつかぶれ:尿や便に接触することで引き起こされる接触性皮膚炎の一種。接触している時間が長いとおむつかぶれを起こしやすいため、排せつ後は速やかにおむつを替えることが大切。おむつかぶれが起きたら、おしりふき等のウエットティッシュの刺激でも痛みがあるため、ぬるま湯などで洗う方法が良い。
■よだれかぶれ:自分自身のよだれに常時接触することで、引き起こされる接触性皮膚炎の一種。ゴシゴシこすると刺激となって悪化するため、柔らかいガーゼなどで優しく、こまめに拭き取ることが大切。
■乳児脂漏性湿疹:顔や頭などに発生するカサカサとした湿疹のほか、黄色みがかったかさぶた状のものができる。沐浴時に優しく汚れを落として、肌を清潔な状態に保つようにする。
■あせも:顔や首、胴などに汗を大量にかくと、汗腺がつまって炎症を引き起こし、湿疹となる。かゆみを伴うことが多く、掻きむしると「とびひ」などの別の皮膚疾患を併発することもある。

幼児期や学童期に多い肌トラブル
■とびひ(伝染性膿痂疹):黄色ブドウ球菌などの細菌によって引き起こされる皮膚疾患。別の湿疹などを掻きむしることで、その傷口から細菌が入り込み、繁殖して炎症を起こす。炎症箇所は水ぶくれ状となり、掻きむしることで、中の液体が周辺部位に広がり、さらに水ぶくれが起こる。
■水いぼ(伝染性軟属腫):伝染性の軟属腫ウィルスに感染することによって起こる皮膚疾患。隆起した湿疹の中にウィルスが含まれており、掻きむしりなどで中のウィルスに触れると、その箇所に感染が広がることがある。
■乾燥性湿疹:肌の乾燥によってかゆみが発生し、掻きむしることで起こる皮膚疾患。乾燥状態が回復するとかゆみが治まることが多い。肌の乾燥状態が続くと、外部刺激に対してさらに脆くなるため、早めのスキンケアが大切。
■手足口病:伝染性のウィルスに感染することによって起こる皮膚疾患。足の裏や手のひら、口の中などに小さな水疱ができ、発熱することもある。水疱は痛みを感じるケースが多い。
■水疱瘡:伝染性のウィルスに感染することによって起こる皮膚疾患。空気感染するため、流行性が高い。水ぶくれが全身に起こり、発熱を伴う。

乳児のアトピーの初期症状や特徴は?

なかなか良くならない乳児湿疹で気が付くことも
アトピー性皮膚炎は、乳児は2か月以上、それ以降は6か月以上続く、かゆみを伴う慢性の湿疹です。そのため、乳児湿疹と診断されていても、慢性化があると判断された場合、アトピー性皮膚炎と診断されることがあります。乳児湿疹がなかなか良くならない場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

乳児期に発症するアトピー性皮膚炎は何が原因?
アトピー性皮膚炎は、すべてが解明された病気ではないため、発症のメカニズムには不明な点が多くあります。ですが、アトピー素因が大きく関係していることがわかっています。アトピー素因とは、家族や本人にアレルギー疾患があることや、免疫機能を持つIgE抗体が多く生成される体質を指します。ただし、アトピー素因があるからと言って、必ずしもアトピー性皮膚炎を発症するわけでありませんので、むやみに心配してストレスにならないようにしましょう。

乳児期の肌は非常にバリア機能が未熟であるため、成熟した大人の肌と比べるとアレルギーの要因となる「アレルゲン」が容易に侵入しやすいくなります。アトピー性皮膚炎に罹患している子どもは、その他のアレルギー疾患に次々罹患する「アレルギーマーチ」のリスクが高くなると言われています。アレルギーマーチの予防には、しっかりとスキンケアを行い、良い肌の状態を維持することが大切です。

顔や首、頭などに多く現れる
乳児期のアトピー性皮膚炎は、まずは肌の乾燥から始まります。カサカサした状態がそのままになると、顔や頭、首などに赤みが現れ、ブツブツとした湿疹が現れます。強いかゆみを伴うため、掻きむしることでさらに炎症が悪化するほか、ジュクジュクとした湿潤性のある状態になり、かさぶた状のものができることがあります。炎症がひどくなると、胴や四肢などにも広がります。

幼児期や学童期からもアトピー性皮膚炎になるの?

発症は乳児期からとは限らない
乳児期にはアトピー性皮膚炎と診断されなくても、幼児期や学童期にアトピー性皮膚炎と診断されることがあります。これは、アレルギーの要因となる「アレルゲン」に接触する可能性が高まることも、原因の一つと言われています。また、アレルギーを発症させる要因は1つとは限らず、複数のアレルゲンが重なることによって発症することもあります。

幼児期・学童期に発症するアトピー性皮膚炎は何が原因?
乳児期のアトピー性皮膚炎の発症と同じく、明確な発症のメカニズムはわかっていませんが、肌のバリア機能の低下と、アレルギー反応を引き起こすアレルゲンが接触・侵入することで発症すると言われています。

また、幼児期や学童期は、発症や悪化はストレスによっても起こると言われています。ストレスを過度に感じると、免疫機能が正常に働かなくなったり、消化器系などの内臓の働きを阻害したりすることがあります。大人のストレス同様に、幼児期・学童期にも環境の変化や対人関係などもストレスになりますので、気分転換やストレス解消は、子どもにとっても大切です。

顔や首、頭に加えて、四肢や胴、関節の内側にも多く現れる
幼児期や学童期には、乳児期同様に肌が乾燥して、顔や頭、首などに赤みや湿疹が現れ、胴や四肢などに広がっていきます。また、お尻やひじ・ひざの関節の内側など、摩擦が起きやすい場所にも広がります。

幼児期や学童期には、衣類を脱ぎ着する際の刺激によって「耳切れ」と呼ばれる症状が出ることもあります。耳切れは、耳の根元が炎症によってただれて、裂けてしまいます。傷症状ですので、痛みを伴うほか出血や化膿することもあります。

小さなころからの「適切な保湿」が予防や悪化防止に

アトピー性皮膚炎の発症メカニズムはすべて解明されていませんが、肌の乾燥がバリア機能を低下させ、肌トラブルを引き起こすことがわかっています。アトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患はもちろん、アレルギー疾患を引き起こさないためにも、丁寧なスキンケアが大切です。

乳児期からの適切なスキンケアが大切
子どもの肌は柔らかく、すべすべとしていますが、肌の表皮は非常に薄くて刺激に弱い側面を持っています。そのため、肌を清潔な状態に保ち、丁寧に保湿して乾燥を防ぐ「スキンケア」を、乳児期から丁寧に行うことの重要性が、改めて見直されています。

毎日入浴で清潔な肌を保つ
外に出かけていなくても、代謝の良い子どもの肌には、汗やよごれ、垢などがついています。毎日入浴して、体を清潔な状態に戻してあげるようにしましょう。お湯の温度は、ぬるま湯にすると、刺激やかゆみの悪化を軽減することができます。

たっぷりときめ細かい泡を使って優しく洗い、石けん成分が体に残らないように、丁寧に洗い流します。忙しいときや暑いときなど、シャワーだけで済ませてしまいがちですが、湯船につかることで、肌が柔らかくなって汚れや落ちやすくなったり、肌に残った石けんなどの成分が落ちやすくなったりする効果があります。炎症がひどいときには、無理に湯船につかる必要はありませんが、可能な範囲で湯船につかる習慣をつけるのがおすすめです。

入浴後すぐの保湿で、肌に含まれた水分を逃がさずに乾燥を防ぐ
入浴後の清潔な肌の内部には、しっかりと水分が含まれた状態になっていますが、バリア機能の1つである皮脂膜が洗い流されて、乾燥しやすい状態になっています。そのまま何もせずにいると、せっかく肌内部にある水分が、表面の水分とともに次々に蒸発してしまい、乾燥が進んでしまいますので、速やかに保湿剤を丁寧に塗るようにしましょう。ゴシゴシと塗り広げるのではなく、手のひらに広げて優しくスタンプを押すようにして、塗っていくと刺激を軽減できます。

アトピー性皮膚炎の治療で欠かせない3つの柱
アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬などの「薬物療法」、アレルギーを引き起こしたり悪化させたりするアレルゲンを取り除く「生活環境整備」、肌のバリア機能を回復させる「スキンケア」の3つが治療の柱になります。どれかに偏るのではなく、バランス良く行うことで、肌の炎症を抑え、正常な肌へ近づけていきます。

子どものアトピー性皮膚炎の場合、成長によって肌の機能が向上すると、アレルゲンに負けない「強い肌」になり、炎症が治まってくることもあります。また、完治はできなくても、肌をより良い状態で維持させることは可能です。自己判断はせずに、医師の診断を受けながら、しっかり治療を行っていくようにしましょう。

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