災害時でも慌てない!アトピー性皮膚炎ならではの悩みに備える「防災」

症状を悪化させないための「持ち出しセット」を準備する

日本は、地震や台風、洪水に火山噴火など、様々な自然災害が発生しやすい国だと言われています。2011年に発生した東日本大震災以降も、2016年の熊本地震や2018年の大阪北部地震・北海道胆振東部地震、2020年の熊本集中豪雨による洪水など、数多くの災害が発生しており、災害に対する備えはしっかりしておいた方が安心です

災害が起こると手に入りにくくなる「薬」
災害時では、アトピー性皮膚炎の治療に必要な外用薬や内服薬などはもちろん、様々な医薬品が不足することが予想されます。ある程度、行政などからの支援が届くようになるまでは、自分自身で確保しておくと安心です。ステロイド外用薬や抗ヒスタミンの内服薬など、現在治療で使用しているものは、常に1週間分程度は手元に残るよう、受診のタイミングなどを調整しておくと良いかもしれません。事前に医師に相談するのもおすすめです。

災害時では難しい「入浴」は、ウエットティッシュで対応
災害が起こると、水道や電気、ガスなどの生活インフラの供給が止まってしまうことも十分に考えられます。アトピー性皮膚炎にとって、入浴で肌の清潔な状態を保つことは大切な治療の一つですが、災害時は入浴も簡単にできる環境ではなくなると、想定して準備しておく必要があります。

シャワー浴や湯船につかって清潔を保つことが難しければ、水がある程度確保てきているなら、タオルを濡らして優しく拭くだけでも、清潔な状態に近づけることができます。水の確保ができない場合に備えて、刺激の少ない成分を使ったウエットティッシュを用意しておくと良いでしょう。ただし、事前に肌に刺激がないか試したうえで、乾燥や雑菌の繁殖を避けるため、保存するのは未開封のものにします。

災害時には、専用の相談窓口が開設されることも
災害発生から数時間から数日ほど経つと、行政や支援機関などからの支援が始まるようになります。アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持つ人に対しても、災害時専用の支援窓口を開設する団体もありますので、携帯やインターネット回線の使用が可能になったら、確認してみると良いでしょう。

被災のストレスは心身に大きな負担になる

災害時は、健康な人でもストレスが増大!
健康な人であっても、被災時の怖さや環境の変化などは、心に大きなストレスを与えます。寝つきが悪くなったり、イライラしたりと、心の不安定さを悩む方もいらっしゃるでしょう。災害から時間が経過することで、少しずつ心が安定して落ち着きを取り戻していくケースが多いですが、完全に元の生活に戻ったとしても、心の傷がなかなか消えずに苦しむ方もいます。

アトピー性皮膚炎では、ストレスは肌の状態に影響を及ぼすこともあり、できるだけストレスフルな状態に長くいないことが大切ですが、災害時下では難しいときもあります。少しでも心が「楽」になるように、規則正しい生活をしたり、体を動かしたりしてみるといいかもしれません。

一人で抱え込まずに、助けを求めることも大切
誰かと「会話する」のは、ストレス解消につながることもあります。世間話やたわいもない話でも、つらい気持ちを聞いてもらうのでも構いません。一人でつらい気持ちを抱えるのではなく、誰かと気持ちを共有したり、会話で頭の中の考えを整理したりすることで、心に落ち着きが生まれると言われています。誰かに助けを求めることは、恥ずかしいことではありません。むしろ、つらいときには「助けて」と言えることが大切です。心にふたをせず、まずは話をしてみましょう。

避難所に行くときに気を付けておくべき点とは

災害の影響で自宅での生活が難しい場合、学校や公共施設など地域にある避難所での生活になることがあります。

アレルギー要素に食物がある場合は特に注意
小麦や卵、牛乳など、食物がアトピー性皮膚炎のアレルゲンになる場合は、支援物資の食事にも注意が必要です。自治体でアレルギー疾患を持つ人用の支援物資が十分に用意されていれば良いですが、必要数に満たなかったり、アレルギーに対しての知識が不足していたりすると、食品は十分にあっても食べるものがないという状態になってしまうこともあります。避難所での食事支援では、どのような食材が入っているのかなど、積極的に確認するようにしましょう。

また、避難所では家族や知人以外の人とも多く交流することになります。子どもの場合、好意でおやつをわけてくれる方もいるかもしれませんが、それにアレルゲンが入っていることも考えられます。小学生くらいになると、自分が食べていいもの悪いものはある程度判断がつくようになりますが、幼児の場合は自身での判断は難しくなりますので、アレルギーがある旨を書いたシールなどを貼っておくと、リスクを軽減できます。アレルギー疾患があることを明示するためのシールやタグなど、自分で用意しておくのが難しいときは、販売している支援団体もありますので、普段からチェックしておくのもおすすめです。

普段の生活のような生活環境整備は難しい
ダニやハウスダストなど、自宅でしっかり対策をしていたとしても、避難所で同じ環境にできるとは限りません。「こうしなければならない」と自分を追い詰めると、かえってストレスになり、悪化してしまうことも考えられます。まずはできる範囲で、できる対策をするようにしましょう。

スキンケアも同様に、できる範囲でいつものスキンケアに近づけるようにしましょう。体の汚れはこまめにきれいにして、しっかりと保湿剤を塗り、肌のバリア機能が低下しないようにするだけでも、肌への負担を軽減できます。ステロイド外用薬も適量を使用して、肌の炎症が悪化するのを防ぐようにしましょう

自宅避難を選択したときに、注意しておきたい点とは

避難所に行かずに自宅で避難生活を行う場合、自宅という安心感を得ることができます。ただし、自宅に倒壊の危険がある場合は、無理をせずに非難するようにしましょう。

日頃から家庭内に備品を備蓄しておくと安心
災害時は、多くの食品や医療品、生活物資などが必要になりますが、道路や線路が被害を受けて、物流に影響することがあります。物流に影響が出た場合、速やかに必要な物資を確保するのはとても大変です。日頃から必要な生活物資を、最低1週間程度は備蓄しておくと安心です。アレルゲンが含まれていないものを、用意しておくようにしましょう。

水は、一人1日当たり3L程度が必要と言われています。1週間分なら21Lになりますので、2L入りペットボトル11本、約2ケース分が必要です。アトピー性皮膚炎がある方の場合、スキンケア用として余分に準備しておくことを考えれば、さらにもう1ケース程度あると良いかもしれません。

防災専用の備蓄ではなく、普段使うものをストックしておく
食品や水は、長期保存が可能な「防災用食品(非常食)」を備蓄していても、気が付いたら「賞味期限が切れていた」という経験をした方も多いかもしれません。防災用食品は便利ではありますが、いざというときに役に立たないのでは意味がありません。そのため、普段から使用している食品などを少し多めに用意しておき、使った分だけ買い足していく「ローリングストック」の備蓄が推奨されています。

アトピー性皮膚炎で食べ物に制限がある方でも、日常的に取り入れている食品をローリングストックするなら安心ですし、食材に無駄がありません。ただし、加熱しないと使用できない食材は、災害時には食べられなくなってしまいますので、カセットコンロやカセットボンベも用意しておくと安心です。

災害時は、アレルギー用の食品や生活物資が不足することも
普段なら簡単に手に入れることができるものでも、災害時は入手しづらくなります。アレルギーに対応したものともなれば、なおさらです。特に乳児の場合、離乳食に完全に切り替わっていなければ、母乳以外はアレルギーに対応した粉ミルクしか栄養源にできません。アレルギー対応の食品や生活物資は、通常の食品よりも多めに備蓄しておくと安心です。

日頃から防災情報をチェックして、「いざ」と言うときに備える

災害は、いつ訪れるか誰にもわかりません。いざというときに慌てないためには、日頃からしっかりと情報収集しておくことが大切です。

住んでいる地域の防災情報、知っていますか?
都心などで暮らしていると、地域でのコミュニケーションが少なく、隣に誰が住んでいるかさえ知らないこともあります。自分が住んでいる地域の避難所がどこか、地域で備蓄しているものはどのようなものがあるのか、など普段は知らなくても困りませんが、災害時は知らないと慌てることにもなります。

アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がある場合、情報や知識が「安心・安全」に大きくかかわってきます。役所や自治会などで地域の情報は入手できますので、提供される情報を待つのではなく、積極的に収集しておくようにしましょう。

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