アトピー性皮膚炎のかゆみが強くなる要因とは

体が温まるとかゆみが増す

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴うことが多く、無意識でも掻きむしってしまうことがあります。特に、体が温まるとかゆみを伝える神経が活発化すると言われており、より強いかゆみによって掻きむしることで、さらに肌のバリア機能が低下し、症状を悪化させてしまいます。日常生活を送る中では、様々な場面で「体が温まる」機会があります。事前に知っておくことで、対処できることもありますので、確認しておきましょう。

入浴中は体が温まり、入浴後には急激に乾燥する
アトピー性皮膚炎の治療方法の1つとして「スキンケア」があります。スキンケアは、体を清潔に保つことと、丁寧な保湿が基本です。体を清潔に保つための入浴は、肌のバリア機能の回復には欠かせません。ですが、入浴は、体温よりも高い温度のお湯につかったり、シャワーを浴びたりしますので、かゆみが増すこともあります。「シャワーだけで済ます」という方もいらっしゃるかもしれませんが、シャワーだけでは汚れやステロイドなどの外用薬が落としにくくなり、肌を清潔な状態に保つのが難しくなります。

入浴でかゆみを悪化させないためには、39度前後のぬるめの温度が良いと言われており、かゆみを紛らわせるために、熱いお湯を使うのはおすすめできません。一時的にかゆみが軽減されたとしても、熱いお湯は肌への刺激が強いうえに、必要な皮脂まで奪われやすく、入浴後の肌をより乾燥させることにもなります。ぬるめのお湯は、体温の急激な上昇がなく、自律神経の1つである副交感神経が優位になり、リラックス効果が得られます。

また体を洗ったり、湯船につかったりすることで、肌の表面にある皮脂が流れ、肌のバリア機能を担う角質層の水分が蒸発し、乾燥が起こります。入浴で肌に含まれた水分を逃がさずに守るには、入浴後すぐの保湿が効果的です。

睡眠中は、深部体温の低下と自律神経のバランス変化がある
アトピー性皮膚炎の方の多くは、就寝中にかゆみが増すと言われています。日中であれば、意識して掻くのを抑えられても、就寝中は掻きむしってしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。就寝時は、布団によって体温が上がるからかゆくなる、という側面もありますが、布団の枚数を減らしてもかゆみは起こります。それは、眠ろうとするときには、「深部体温」と呼ばれる体の内部の体温を下げようとする働きが起こるからです。「体温が下がるのなら、かゆみは治まるのでは?」となりますが、深部体温を下げるためには、肌表面から内部の熱を放出する必要があります。そのため、手や足の皮膚血管を拡張させて熱を伝え、体の外に熱を出して体内の温度を下げています。小さい子どもが眠くなると手足が温かくなるのは、これと同じ作用です。

また、睡眠中は自律神経の働きが日中とは異なったバランスになります。自律神経には、活動的な機能をつかさどる「交感神経」と、リラックスさせる機能をつかさどる「副交感神経」があります。人は主に日中に活動することが多いため、昼間は交感神経が、夜間は副交感神経が優位になり、これらがうまくバランスを取ることで、体の機能がコントロールされている状態です。副交感神経が優位になると、免疫機能を持つリンパ球がより多く作られるようになります。その結果、リンパ球が過剰に働くことでアレルギー反応を引き起こしやすくなり、かゆみが強くなると言われています。

暖房やドライヤーの温風は、体を温めて乾燥させる
寒い時期には、エアコンやストーブで暖を取ることが増えてきます。風邪を引かないためには、室内を暖かくしておくことは大切ですが、アトピー性皮膚炎にとっては悪化の原因となることがあります。これは、暖房を使用すると、皮膚が温まってかゆみが増すのに加え、温風が直接体にあたることで肌表面が乾燥するためです。同様に髪を乾燥させるためのドライヤーは、髪や地肌だけでなく、顔や首などの周辺の皮膚からも水分を奪います。

冬場に暖房は欠かせませんが、空気を乾燥させにくい暖房器具を使用したり、温風が直接当たりにくい位置に設置したりするなどの工夫が大切です。ドライヤーについては、タオルドライでしっかり髪の水分を取り、冷風などの低い温度で乾かすと、肌の乾燥を軽減できますのでおすすめです。

体温調節機能が低下すると、体に熱がこもりやすくなる
体温を調節する役割を担う「汗」ですが、アトピー性皮膚炎の方は汗をかきにくかったり、汗の量が少なかったりする傾向があります。そのため、体に熱がこもる「うつ熱」状態となり、かゆみが増します。汗をそのまま放置すると刺激となり、かゆみが増す原因にもなりますが、汗にはアトピー性皮膚炎にとってプラスの効果をもたらしますので、積極的に「汗をかく」ようにしましょう。

■汗による効果
・体温を一定にする「体温調節機能」
・汗に含まれる天然保湿因子によってもたらされる「肌の潤い」
・汗に含まれる抗菌ペプチドによる「感染防御作用」

季節の変わり目は、気温の変化や花粉にも注意

日本には四季があり、春夏秋冬様々な気候を楽しむことができます。ですが、季節によって起こる環境変化は、アトピー性皮膚炎にとってかゆみを生じさせる原因になることもあります。

夏の暑さや冬の乾燥でかゆみが増す
日本の夏は高温多湿で、体温が上昇しやすい特徴があります。そのため、アトピー性皮膚炎の肌にとっては、体温上昇によるかゆみのほかに、汗による刺激が加わることになります。通気性の高い衣服を選んだり、汗をかいたら濡れたおしぼりで肌を優しくぬぐったりして、かゆみの要因を減らすようにしましょう。

冬は、健康な肌でも乾燥が進む季節です。アトピー性皮膚炎は、肌の乾燥によってバリア機能が低下した状態で、アレルギー反応を引き起こしやすくなっています。保湿はこまめに丁寧に行ったり、加湿器を活用したりして、肌をできるだけ乾燥させない工夫が必要です。

春や秋は花粉による刺激を受けやすい
春先によく聞かれる「スギ花粉症」はもちろん、ヒノキやブタクサ、イネ科など、春や秋には様々な花粉が飛んでおり、花粉をアレルゲンとするアトピー性皮膚炎の場合は、春や秋にも刺激を受けることになります。このほか、アトピー性皮膚炎と花粉症を併発していると、鼻をかむことによる肌への刺激や、目のかゆみによって目をこする刺激などによって、局所的でも肌のかゆみや炎症が悪化することがあります。洗濯物は室内干しにしたり、スキンケアを丁寧に行ったりして、花粉刺激を減らすようにしましょう。

紫外線量が増える時期は、日焼けによる肌ダメージにも注意
日光浴には、ビタミンDの生成を促したり、体内時計をリセットして生活のリズムを整えたりする効果があります。また、心を安定させる効果を持つ神経伝達物質「セロトニン」の
分泌を促してくれます。幸福感をもたらすとして「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの分泌促進は、かゆみによるストレスはもちろん、ストレスで悪化した炎症を軽減するためにも、嬉しい効果と言えるでしょう。

ですが、日光浴をしようと過度に紫外線を浴びれば、日焼けとなってしまいます。日焼けは、紫外線によって引き起こされる肌の炎症で、軽い「やけど」状態となり、肌にダメージを与えます。肌が赤くなったり、ヒリヒリとした痛みが出たりして、アトピー性皮膚炎の炎症をさらに悪化させることになりかねませんので、過度な紫外線を浴びることは避けるようにしましょう。

月経前後のホルモンバランスの変化

月経前にイライラやむくみなどを引きこす「月経前症候群」の症状の1つとして、肌トラブルが挙げられます。月経前症候群は、女性ホルモンが大きくかかわっていると言われています。中でも、月経直前に急激に増加する黄体ホルモンは、体に水分を溜めたり、体温を上げたりする働きを持っており、ニキビやしみが悪化したと感じる人もいます。

アトピー性皮膚炎でも、ホルモンバランスが急激に変わることにより、その影響を受けやすいと言われていますので、注意が必要です。いつもよりスキンケアを丁寧にしてバリア機能を回復させたり、生活習慣を整えたりして、できるだけ月経前後の影響を受けにくいようにしましょう。

肌に合わない洗剤や化粧品

アトピー性皮膚炎の肌には、洗剤や化粧品による刺激はできるだけ少なくする必要があります。敏感な肌向けの低刺激のものを使用するようにしましょう。

洗濯は、洗剤とすすぎが重要
衣類やシーツなど、肌に触れるものをできるだけ清潔にしておくことは、アトピー性皮膚炎を悪化させないための有効な手段の1つですが、洗濯をする際に注意しておきたいポイントがあります。アトピー性皮膚炎の肌にとっては、洗濯で使用する洗剤の成分も肌に影響を及ぼします。できるだけ低刺激のものを使用するようにしましょう。界面活性剤が入ったものは、汚れをしっかりと落としてくれますが、肌には刺激を与えてしまいます。

近年では、エコを目的としてすすぎ回数の少ないタイプの洗剤も多く出ていますが、すすぎの回数が少なければ、洗剤成分が衣類に残りやすくなります。衣類に洗剤成分が残った状態で着用すると、その刺激が肌へ伝わってしまい、症状が悪化することがあります。また、小さい子どもの場合は、衣類を口に含んでしまうことも多いため、経口から成分を取り込むリスクもありますので注意しましょう。

石けんやシャンプーは低刺激のものが基本
入浴などで使用する、石けんやシャンプーは、固形でも液体でも構いませんが、低刺激のものを選ぶようにしましょう。低刺激とは添加物が少ないもしくは無添加のもので、弱酸性のものを選ぶと良いでしょう。石けん成分が体に残ってしまうと、低刺激のものでもアレルギーを引き起こしかねませんので、丁寧に洗い流すのがポイントです。

石けんやシャンプーを使う際は、そのままこすりつけるようにして洗うのではなく、必ず泡立ててから使います。ふっくらとしたきめ細かい泡で洗うと、肌への刺激を軽減できますので、しっかりと泡立ててから使うようにしましょう。

炎症がひどいときのメイクは避ける
肌の状態が悪いときほど、メイクで炎症部分を隠したくなりますが、ファンデーションなどのメイク用品は刺激となり、肌の炎症をさらに悪化させることにもなりかねません。炎症がひどいときのメイクは、避ける方が無難です。炎症が軽いときは多少のメイクは可能ですが、ファンデーションやクレンジングなど、刺激の少ないものを選ぶのがおすすめです。また、
メイク前はしっかりと保湿を行い、肌への刺激を軽減するようにしましょう。

総合評価1位の商品はこちら